資産形成の今後の可能性

恐竜とコーヒーカップについては、少なくとも夢ではなかった。
実物である。 そういう物体が存在した。
今でもある。 私の家の外と家の中にある。
恐竜は、S・M子さんがコンクリートで作り上げた彫刻作口中だし、コーヒーカップの方は、T子さんのお父さん、I・Yさんが製作したアトラクションだ。 いずれも大作と呼ぶに相応しい代物だけれど、それらの物体にもまして、それを作り出し、わざわざ私のところへ設置した人たちの精神の方がはるかに凄まじい。
この凄まじさに、私はなす術がない。 そうなのだ。
どうもみんなが凄まじすぎる。 この近辺の人たちは、というか、私を取り巻く人たちは凄まじいのだ。
凄まじい人が私に接近してくるのだろうか。 あるいはもしかして、人間はみんなそもそも凄まじい生きものなのか。

そんな中で、私だけが平凡でテンションが低いのだろうか。 そんな気もしてきた。
そういうわけで、夢や妄想やときどき巡る思考に多少の変化はあったものの、実生活ではほとんど変わりはない。 といいたいところだが、一つだけ変化があった。
I・Yさんが、あの晩、私の家に泊まっていった。 どうも、作ったばかりのコーヒーカップの調整が完全ではない、というのが理由らしく、工具を出して、機械の横に寝転がり、ハッチを開けた部分に頭を突っ込んでいた。
少し直しては試運転があり、また首を捻っては、ハッチの中に頭を突っ込む、ということの繰り返しだった。 素人目には、何がいけないのかわからない。
普通に動くからだ。 ただ、彼の手が機械の油で真っ黒だということだけが印象的だった。

私は眠ってしまったけれど、朝になっても、Iさんは作業着のままだった。 「徹夜されたのですか?」私は尋ねた。
「いや、少し寝たよ。 かまわんで下さい」Iさんは笑った。
かまっているつもりはない。 むしろ、かまわないで下さい、と言いたいのは私の方だ、と思ったが、そんな指摘はできない。
T子さんは朝ご飯を支度していて、ご飯と味噌汁の豪勢なブレックファーストだった。 このところ、こういう賛沢な食生活が続いているのである。
私は少し慣れてしまったが、考えてみたら、T子さんはIさんの娘である。 Iさんは、幸せだったのではないか。
私としても、この朝は、なんというのか、また感動を新たにしたというのか、恐縮したというのか、身が引き締まる思いがしたのは確かだった。 Iさんは、朝ご飯を食べているときずっと、もの凄く嬉しそうな顔だった。
「ああ、美味いなあ」と何度も口にした。

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